四姉妹からの手紙

2人の物書きの往復書簡です

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

余白こそ ── 雅季子

イタリアの友だちと話したっていうことを前回は書いたけど、来週は、オーストリアのウイーンに住む友だちとzoomで話すことになった。実際にはもう4年ぐらい会っていないけどたぶん大丈夫。オンラインで関係性を維持していれば、再会してもすぐにじゅうぶん新…

忘れることにまつわるいくつかのこと ── カガワヨリ

2回目のワクチンを打った。いまその待機室でこの文章を打っている。大きなモニターには毛並みのいい猫のお尻のアナが大写しになっていて、振り込め詐欺の注意喚起がされている。なんで猫なのかはよくわからないけれど可愛いので見ちゃう。見ちゃうから、猫…

質量との激闘 ── 雅季子

羊雲、綺麗ね。このあたりでは金木犀が咲き始めている。今年は香りより先にオレンジの花がまばらに開きつつあるのが目に入って、それで気づいた。マスクのせいもあって香りを感じにくい。もっと言えば、香りを感じ取れないことで季節との距離を見積もりそこ…

目もくれずに「好き」と言えること ── カガワヨリ

あまりにも慌ただしい数日が過ぎた。追い立てられるように駆け抜けていると、ふと突然、電源が抜かれたようにプツンと立ち止まってしまうことがある。打合せに向かっているとちゅう、プツンとなにも考えられなくなって、ただ「糖分……糖分……」とつぶやきなが…

偏屈な女の質疑応答 ── 雅季子

斜め読みはしなかったけれど忘れはするかもしれない。でも忘れたらまた読めばいいのだ。そのために私たちはここに日記を書き残しているのだから。 主観と客観という言葉の意味がわからない。カガワヨリが言わんとしていることはわかるけれど主観と客観に翻弄…

読み飛ばしてくれていいよ、忘れてくれても ── カガワヨリ

あらためて、人って全然違うんだなと噛み締めている。 わたしはすぐ「忘れる」。書いたことも忘れ、なんならふと読み返しても「これわたしが書いたんだっけ?」と首をひねることもある。もう20年前の恋人に「あれ、わたしと付き合ってたっけ?」としばらく思…

覚えていることと忘れることの比較検討 ── 雅季子

コーンフレークを切らしたのでフルーツグラノーラを食べている。ヨーグルトに乗せて食べるという思い込みがあったのでわざわざ牛乳のかわりにヨーグルトを買い、混ぜて食べているが、食べながらパッケージを見たら「牛乳200mlをかけた場合」の栄養価が書いて…

楽しまないことを楽しむ深遠 ── カガワヨリ

現在はいやおうなく過去へ流れ去ってしまうね。押入れの奥で深く眠っていたダンボール。そのなかに詰まった薄いA4ノートの束。あるいはもうログインIDすら忘れてしまったブログ。そこにある文字、大量の文字たちは、ものすごい密度と重量と湿り気をともなっ…