四姉妹からの手紙

2人の物書きの往復書簡です

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

制限の日々  ── 雅季子

四季と死期。良く映える対比だ。ついでに士気を高めて指揮を執り私記を書くこともできる。月経は毎月おとずれる死じゃないのかしら。一度死ぬとも、また生まれ直すとも考えていいけれどここ数年は、自分から新しい命が生まれる想像をすることがなくなった。…

あなたからは金木犀の香りがする ── カガワヨリ

金木犀は自然に生えない。人の手によって植えられ、増やされてきた。金木犀は自分で増えることができないから、香りで人間を惑わし増やさせたのかもしれない。という話をTwitterで見かけて、それは人間のことだと思った。なにかに寄生して、美しいようなフリ…

最初と最後に選ぶもの ── 雅季子

まあそうだ。物書きでいたいか、とか、あなたは物書きとして生まれたのか、と問われて、ふたつの問いは根源的に異なるけれど、いずれにしてもイエスと答えるようなやつはとりあえず疑ってかかったほうがいい。でも、あなたが友達をなくし仕事をなくし家をな…

渡り鳥の欲望は──カガワヨリ

物書きでいたいのか、というと自信を持ってそうだとは言えないなぁと、ぼんやり歩きながら思った。物を書くことは、私にとって走ることに似ている。べつに歩いてたってどこにでも行けるし誰かに会いにも行けるけれど、走った方がすぐに行けるしすぐに会える…

日々の墓標 ── 雅季子

書くべきものに追われているときは、締め切りのある原稿よりも、自由意志で書くものを、ほんの少しの量でいいから先に書いた方がいいんだと思う。そうでないと、請われたものしか外に出せなくなる。なんだっけなあ、いつかこの日記でも「聞かれてないからそ…

灰色のコンクリートの合間に光る ── カガワヨリ

交換日記も半月あいだが空くと、自分と自分がかつて書いたものがつながらなくなって参る。 と、まさにあなたが言ったようなことと同じく。この半月にいろんなことがあってブログもかけず、この半年になにがあったのかもうきちんと思い出せない。整理して思い…

遠い人ならあきらめがつく ── 雅季子

交換日記も半月あいだが空くと、自分と自分がかつて書いたものがつながらなくなって参る。すっかり細胞の入れ替わる速度も早まってしまって、それなのに人間の寿命だけは伸びてるなんていやだこと。こんな感覚であれやこれやに火を立てて80歳まで、1億人みん…

オンラインのあなたへ ── カガワヨリ

よしながふみの漫画だったか、誰かの小説だったかある男性と女性がバーだかで出会い、意気投合して、女性の方も「この人だったら……いいかな?」なんて思って店を出ようと立ち上がった時、男性の身長がとても低いことに気づく。あきらかに怪我か病気が原因で…