四姉妹からの手紙

2人の物書きの往復書簡です

余白こそ ── 雅季子

イタリアの友だちと話したっていうことを前回は書いたけど、来週は、オーストリアのウイーンに住む友だちとzoomで話すことになった。実際にはもう4年ぐらい会っていないけどたぶん大丈夫。オンラインで関係性を維持していれば、再会してもすぐにじゅうぶん新しいものを構築できる素地があるから。オンラインで、初めての人やものに出会うのがうまくいかないのは、ぬかるんだ地盤に城を建てるのが難しいのと似ている。習い事とかもそうじゃないかと思う。昨年春、いろいろなものがオンライン上で試行錯誤された中で「オンラインバレエクラス」は結構すんなり上手くいってるように私には見えたのだけど(とりわけプロ向け)、あれは遠隔 "教育" じゃないからだろう。すでに基礎やルールを理解して体得している人向けに、積み上げたものが崩れないようにする 遠隔の "処置" だったのだ。しかし応急処置だけでは傷も病気も治らないのは言うまでもないし、じゃあワクチンがあればいい、という話でももちろん、ない。

 

今週はすごく忙しかった。忙しいというかひとつの場所にとどまって作業をしなければならない時間が多くて余白が少なかった。たとえば通勤電車もそうだし、昼間缶詰にされる職場もそう。夜の劇場やスタジオにも余白はない。私は空き時間にスマートフォンで文章を書くことができないからすっかり日記も遅れてしまって申し訳ない。そのうえ言葉が涸れて今はこれ以上書けそうにない。

 

ワクチン接種の副反応について「死ぬかと思いました」とある人が言っていたので「死ぬかと思えるということは生きてるってことですよ。よかったですね」と口をはさんだら、まことに心外である、というような顔をされてしまった。